2/22で猫の日なので猫ネタ。
漫画家フーゴと恋愛体質ナランチャパロです。





長年の友人関係を破って一線越えたと言っても、イチャイチャしたり手を繋いだり、そんな甘い時間が流れるようなことは一切ない。フーゴは相変わらず原稿に向かっているし、ナランチャに対してもそっけなく、いつまで居るんですかと悪態をつくだけだ。
ナランチャはベッドで寝転がりながら、読んでもいない雑誌をめくって、ちらりとフーゴに目線を配らせた。
男にしては綺麗な手が、軽やかに紙の上を滑っている。そのシャーペンの芯が擦れる音と、フーゴの指が好きだった。
この間みたいに、その指でいっぱい触って欲しかった。

(フーゴはもう、無かったことにしたいのかなァ)

原稿を邪魔すると怒って追い出されるし、しつこく尋ねる訳にも行かない。ナランチャが溜息をつくと、同時にフーゴも息を吐いた。シャーペンをくるくと回したり、消しゴムを大きく掛け始めたり、何やら上手く行っていない様子だ。チャンスだと思って、ナランチャはベッドから立ち上がった。
「ねぇフーゴ。疲れたんじゃあないの?チョット休憩しない?」
背後から抱き付くように手を回すと、フーゴは鬱陶しそうにそれを振り払う。
「疲れたワケじゃあないんですが、上手く行かなくて。題材に失敗したかな」
フーゴの目線の先の原稿を見ると、そこには猫耳が生えたキャラクターが書かれていた。ファンタジーなのかもしれない。
「ふーん。セリフが思い付かないとか、そう言うこと?」
「いや、作画の問題ですかね。猫耳が描けないんですよ。だって普通人間に猫耳なんて生えてないでしょう?」
「そりゃあまぁ・・・そうだけど。でもマンガの世界だろ?」
ナランチャの方がある意味真っ当なことを言うと、フーゴはもう一度重い溜息をついた。
「まいったな。締切も近いのに。きみ今すぐ頭に猫耳生やしてくれませんか?」
「無茶言うなッ!・・・あッ、でもそうだ。できる!生やせるかも!」
まさか、とフーゴが言う前に、ナランチャはぱたぱたと走ってダイニングキッチンの方へ行き、数分してからまたすぐに姿を現した。
戻って来たナランチャの手には、猫耳カチューシャが握られてある。
「ホラこれ!お前のファンがさ~~送って来てくれたヤツ!」
「ああ、バレンタインの時の荷物の・・・よく覚えてましたね」
黒猫をイメージしかたのような猫耳は、そこそこ精巧にできており立体感があった。
ナランチャはそのカチューシャを頭に被ると、もう一つ持っていた猫の尻尾も、ショートパンツの後ろに引っ掛けてぶら下げた。
「にゃーん。どう?おれ似合ってる?」
「はいはい。チョットそのまま動かないで下さいね」
ナランチャの渾身の猫ポーズを気にも留めないで、フーゴはハードカバーの上に紙を敷くとすぐにデッサンを始めた。
「ふかんが描きたいんで、座ってくれます?」
フカン?と思ったが、とりあえずナランチャは言われた通り床に座った。フーゴは一歩下がった所で、真面目な顔をしてその姿を紙に描いてる。
(・・・おいおい、普通コスプレしたらムラムラするもんだろうが~~ッ!)
今まで遊んできた男のことを思い出して比べてみるが、フーゴはまったくナランチャを異性として見てはいないようだった。ナランチャはムキになると、元々ゆるい襟元のTシャツから肩を覗かせてみたり、足を組み替えてみたり誘うような行動を取ってみる。
(やっぱ胸がないからなァ)
フーゴは一度ナランチャと肉体関係を持ったとは言え、ノーマルな思考の持ち主だ。体が男では駄目なのかもしれない。
床に手をついて前のめりになってみると、フーゴに「動かないで下さい」とまで言われ、ナランチャは内心でこのヤロウと毒づいた。
「こんなもんかな。いいですよ、ナランチャ。ありがとうございました」
一通り描き終えたのか、フーゴは紙から目を離してお礼を言う。
「結構いい見本になりましたよ。時給でも払いましょうか?」
別に冗談でもなく、本気でそう思ったと分かったから、ナランチャは勢いよく立ち上がるとフーゴに詰め寄った。
「ッ・・・あのなぁ!おれはマンガの見本になりたいんじゃあなくって、フーゴとエッチなことがしたいんだよ!どうせ男の猫耳なんか見てもナンとも思わねぇんだろうけど、振り向かせようと思ってるコッチの身にもなれよ!」
胸倉を掴む勢いで、張り詰めた声を投げかける。どうせこんな風にまくしたてたって、いつもの用に振り払われることは分かっていたが、一言言ってやらないと気が済まなかった。
しかしフーゴは服を掴んでいるナランチャの手を退けもせず、「う」とか「あの」などと唸り、言葉に詰まっている。
珍しいその姿に、ナランチャは大人しくフーゴが話し出すまで待った。
「その・・・すいません、ナランチャ。何も思わないわけでは・・・ないんです」
「へ?」
「か、か、可愛いなとか、そう言うこと、思わないわけではないんですが・・・ああ、くそ。オレは何を言ってんだ」
動揺したり怒ったりすると一人称が変わるのは、フーゴの癖だった。ナランチャはぱちぱちと瞬きをしながら、耳まで赤くなったフーゴをじっと見つめる。こんな風に照れて赤面するフーゴは、長い友人付き合いでも初めて見た。
「それってどう言う意味?フーゴ」
「やめて下さいよ。深く聞くのは。ぼくもあんまり考えたくないんです・・・でも」
フーゴは恐る恐ると言うように、ナランチャの肩に手を置く。
「・・・ちゃんと、考えるから。この間の事も。とにかく今は原稿が終わらないと」
フーゴの言葉一つ一つが頭に入り、理解して行く。最後まで聞くとナランチャはぱあっと表情が明るくなった。
「なぁなぁ!それっておれの事意識してるってこと?おれの猫耳でヨクジョーしたってこと?」
「うっ。も、もう今は何も聞かないで下さい。締切が近いんですよ」
本当に困っているようにフーゴが時計の方へ目を向けたので、ナランチャは眉を上げて笑う。
「じゃあその締切が終わったらだな!ちゃんとおれの事考えてくれンだなッ!」
「ええ、終わったらね」
フーゴは絞るような返事をすると、体をぴたりと合わせて来ようとするナランチャを引き剥がして、再び机に向かった。
その背中を見送ると、ナランチャはもう一度ベッドにごろんと寝転がる。

(早くフーゴの原稿が終わるといいな)

そう思い心を弾ませながら、枕を抱きかかえた。





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