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四木六

1期が終わって早4年か・・・長かった・・・
デュラにハマった当初、まさか4年後も四木ろちでもえてるとは夢にも思いませんでした。
六条大好き!

でもそう考えると相方さんと知り合って5年以上経つのかな?おそろしいね?月日の流れって!

もうすぐ5部オンリーですね。
実はひっそりとギャンパラ出てます。
居るだけですけど笑
2011.04.11
四木ろち絵
ピクシブに随分前に上げたものなんですが、ブログに上げておくのを忘れていました。
すいません><

これかなり前に描いた覚えがあったので、私は一体いつから四木ろちとか言い始めたんだろう・・・
と思ってブログをさかのぼってたら、なんと去年の10月から騒いでました。
もう四木ろちとか言い始めて半年。早いものです。
しかし相変わらず私とくろ太さん以外で四木ろちを描いてる人を見た事がないですww
いつか流行るって信じてる!



sikirochi.jpg

4月6日は四木ろちの日!





『知るも知らぬも地獄の沙汰』


赤林さんの策略にまんまとはまった俺も馬鹿だとは思う。
確かにちょっとおかしいとは思ったよ。
でもやくざの仕来たりなんて知らないし、そう言うものかと思って。
なんだかその後数日も、赤林さんの唇の感覚が残って抜けなかった。
俺だって力は強い方なのに、腰に回された腕がびくともしなかった。
遊んでて、力が強くて、口が上手いなんて、相当タチが悪い。

これは早い所四木さんに伝えた方がいいのかもしれない。
一度弱みを握られると、このまま続いたり悪化してしまう可能性もあるし、
何より俺に手出しをされたら、四木さんの身が危ない。
粟楠の会長に認められたと言う事は、四木さんが責任を持って俺を管理すると言う事らしい。
守れなかったら、なんらかの制裁があるのだろう。
四木さんのためにも、一応こう言う事があったと伝えるべきだと頭の中で整理して、顔を上げた。

考え事をしながら歩いていたら、目的の場所までたどり着いていたようだ。
重い木製のドアを開き、お店の中へ入ると、店主が奥の席に手を向け、「お待ちしているようですよ」と言う。
この店は喫茶店とバーを合わせたような飲食店で、未成年の俺も連れて来れる事から、四木さんとの待ち合わせによく利用している。
昔はよくこの店に一人でお茶していた。
何も望んで一人な訳じゃなくて、四木さんが待ち合わせに来なかったのだ。
約束した時間を過ぎてから、急な用で行けなくなったと連絡が来る事もざらで、ひどい時は連絡すらなかった。
今思えば、あの時四木さんは本当に忙しかったのかもしれない。
あまり多くを語らない人だから、見誤ってしまう事もよくあった。

店の奥の方へ足を運ぶと、四木さんの姿が見えた。
カウンターに向かって煙草の煙を燻らせている。
四木さんは後ろ姿が一番かっこいい。

「先に来てたんだ、四木さん」
呼びかけながら、隣の席に座り店主に紅茶を注文する。
「おや、学校帰りですか」
俺の制服姿を見て、四木さんが言った。
「おう。いったん帰ろうかと思ったんだけど、ちょっと時間なくて。……あ、わり。あんたそう言えば制服のカッコ嫌ぇだったっけ」
「嫌いと言う訳ではないんですが」
四木さんは頬杖をつきながら、俺を見やる。
「目立ちませんか?私と、六条さん。まるで私がいけない事でもしているようです」
言われた通り四木さんと自分の姿を見下ろすと、なるほど確かに援助交際でもしているように見える。
思わず俺はふき出して笑ってしまった。
「っはは、実際いけないコトしてんじゃん」
「それを言われてしまうと、何も言い返せないですね」
「それに俺と二人で居る時より、あんたと赤林さんとのセットの方が絶対目立つって」
「確かに、赤林さんは単体でもひどいもんですからね」
穏やかに小さく笑っている四木さんからは、機嫌のよさが窺える。
よし、今だ、と思って赤林さんとの事を話し出そうとした。
その矢先、そう言えば、と四木さんが切り出してくる。
「赤林さんが客先から珍しいバイクを譲り受けたようで、携帯で写真撮って、あなたに見せたいとか言ってましたよ」
「へぇ、そうなのか。メールで送ってくれりゃいいのに」
俺のその言葉で、ぴく、と四木さんの眉が動く。
「アドレス、教えたんですか?」
しまった、と咄嗟に思った。そしてそれが表情に出たかもしれない。
赤林さんにはあのキスの件があった後、連絡先を教えておけと言われていたのだ。
いやでも、と渋ると、「あの事、俺の口から四木の旦那に言っちゃうよ~?」と言われつい教えてしまった。
すべてを一から説明するには、完全に言うタイミングを逃した。
「……教えちゃマズかったのか?」
なんとかそれだけ返事をすると、四木さんはグラスに残っていたウィスキーをぐいっと呷った。
「なぜ私が、六条さんを会長に紹介したか、分かりますよね?」
俺はこくりと一つ頷いた。
それは俺がこの先も、粟楠内でうまく立ち回れるだろうと四木さんが判断したからだ。
粟楠内で少しでも火種になるような事はするなと、そう言いたいのだろう。
四木さんをちらっと見上げると、表情は固く、手持ち無沙汰に煙草の箱をいじっている。
さっきまでの機嫌のよさが嘘のようだった。
四木さんは新しい煙草を取り出し加えると、火を付けろと言うように顎をくいっと上げる。
普段はそんな事すると怒るくせに。
俺は四木さんのジャケットのポケットに手を入れてライターを取り出すと、火を付けて煙草の先端に近づける。
瞳を細めて一服する姿が、憎らしいのに格好いい。
「出ますよ」
席を立ち、さっさと出口へと向かってしまう。
あーあ、本当にあんたって勝手だよ。




道なりに歩いて行く。
もちろん四木さんは俺と歩調を合わせたりしないで、すたすたと先に行ってしまう。
今機嫌が悪いから、と言う訳ではなくて、それはいつもの事だった。
だから俺は特に気にもしないで、周囲の店のディスプレイを眺めつつ、四木さんの後を付いて行く。
どうせこの後はホテルか粟楠の事務所か、四木さんの家だ。
年齢差と性格に余りにも違いがあり過ぎて、俺らの行く場所なんて限られてる。
四木さんが俺に合わせて、ゲーセンやカラオケに行く訳もない。
でも俺は別にそこに不満があるわけじゃなかった。
ゲーセンに行きたきゃ、ハニーや友達と行けばいい。
俺に少しの不満があるとすれば、それは四木さんの機嫌によって俺の世界ががらりと変わってしまう事だ。
一日の間に天国と地獄を行ったり来たり。
この人と居る限り、安定や平穏なんて日々は訪れないのだろう。

「ろっくじょうくーん」
唐突に聞こえたその声は、軽率で馴れ馴れしいものだった。
てっきり知り合いかと思って振り向けば、途端に肩を強く押されて、コンクリートで出来た壁に押し付けられる。
「痛って・・・!何しやがる・・・!」
「あれ?痛ぇの?ウワサによればすごーく打たれ強いって聞いたけど」
見上げれば、若いがガタいの良さそうな男が3人。いや4人だ。
俺の名前を知っていると言う事は、To羅丸絡みだろう。
すでに木製バッドを持っていたので、俺も遠慮なく懐から兜割を引き抜いた。
「手前ぇのシマは埼玉だろうがぁ!とっとと帰れや田舎モンがぁ!」
頭を思い切りバッドで殴られ、路地裏まで吹っ飛ばされた。
あえて避けなかった。
本当はちょっとは痛いが、何でもない風を装って、反動を付けて立ち上がる。
その方が恐れを抱いて逃げて行ってくれる事が多い。
いつもならケンカも受けて立つが、俺は急いでいた。
早くこいつら巻いて四木さんに追いつかなきゃならない。
「一対多数とは気にいらねぇなぁ。人数が多きゃ俺をボコれると思ったのかよ?あいにく俺は・・・」
おどしの口上を並べていると、不意に人影が視界に入ってきた。
また一人増えたのかと横目で見やると、俺は驚いて言葉が止まってしまった。

「四木さん」

後ろに居る俺に一切目線もくれないくせに、なんで居なくなった事が分かったのだろう。
「ああ?なんだ、手前ぇ・・・」
不良らが四木さんの方を睨み付ける。
少しの逆光と距離で、まだはっきり姿が分からないようだ。
「やれやれ、六条さんは厄介ごとに巻き込まれるのが好きですね」
言いながら四木さんはゆっくりとこちらに近付いてくる。
ただならぬ気配に、不良らの動きも止まっていた。
「人をドMみてぇに言うなよ。でもよく気付いたな。俺が途中で追いつけなくなったの」
「あなたが背後に居るか居ないかぐらい、分かりますよ」
四木さんが俺の横を通りすぎて、先頭に居た男の一人と対面する。
その時ようやく、四木さんの顔にピンと来たようだ。
「手前ぇは・・・!」
四木さんは男の顔を片手で掴み、口を封じた。
かなりきつく掴んでいる事が、男の苦しそうな表情からして分かる。
空いた片手はポケットに突っ込んだまま、口端をつり上げて笑った。
「誰の女に手ぇ出してんのか分かってやってんのか?ああ?」
「ぐっ・・・は、離せ・・・っ!」
まるでめきめきと音が鳴っているように、男の顔が歪んで行く。
俺は何から驚いていいのか分からず、ただただその光景を眺めているだけだった。
「俺が粟楠の四木だって分かって手出ししたんなら、命はいらねぇって事だよなあ?」
四木さんが腕を力強く払うと、男は地面に仰向けに倒れ込んだ。
そこへすかさず男の肩を、革靴の踵で打ちつけ、身動きを取れなくする。
「ひっ・・・!」
四木さんがジャケットの内ポケットに手を入れたと思ったら、そこから出てきたのはなんと拳銃だった。
今まで傍観していた男の仲間達は、それを見て叫びながら一斉に逃げ出した。
四木さんは顔色一つ変えず、銃口を男の眉間に押し当て、目線を合わせる。
「二度目は無い。手前ぇの仲間にもきっちり分からせておく事だ。誰のシマで遊ばせてもらってんのかをな」
男は言葉もなく、無言のまま必死に何度も頷く。
そのまま失神するんじゃないかと思うほど、瞳孔が開いていた。
四木さんが銃をしまい体を離すと、男は這いつくばる様に逃げ出した。

(チャカなんて初めて見たぜ・・・)
俺は思わずごくりと唾を飲み下した。
「どうかしましたか?」
すでに何事もなかったように、四木さんは俺に向き直る。
「いや、四木さんて・・・やくざだったんだなって」
「何を今さら」
溜息を吐き出しながら、四木さんはまた歩き出してしまったので、慌てて後を追った。
そして騒動の最中だったためうっかり聞き流したセリフを今になって思い出す。

『あなたが背後に居るか居ないかぐらい、分かりますよ』

俺の事、ちゃんと気にしてくれてるんだ。
普段の態度が冷たいから勘違いしてしまうが、こう言う事が起こる度、俺は思い知らされるんだ。
あんたにいかに愛されてるかって事を。

俺は四木さんに追いついて並んで歩くと、頭の後ろで指を組みつつ話しかける。
「あの銃ってホンモノだよな?オドシだからって本気過ぎんだろ」
「いえ」
俺は四木さんを横目で見やった。

「脅しと言うか、もう撃ってやろうと思ったんですけど。さすがにあなたの前では教育上よくないかな、と思いまして。まだ未成年ですからね」

思考に色々な言葉が巡って行ったが、一つも口には出せなかった。
そして俺ははっとして目を開く。

こんなんで赤林さんの話なんかしたら・・・と想像して、ふるふると首を振った。

絶対に言える訳がない・・・!

俺が青ざめている理由を、四木さんが知るよしもなかった。



<END>




最近六条サイト巡りをしても、休止していたりジャンル変更していたりして
六条に出会えません><寂しい・・・。

結構昔に書いた四木ろちが出てきましたので、載せておきます。
時系列的には、一番古い話になります。
今までろち視点の一人称で書いてましたが、↓は3人称です。
そう言えば一人称小説、四木六で初めて書いたんですよね。
情緒や気持ちの移り変わりがメインなら一人称もいいですが、
ストーリーや設定にこだわりたくなってくると、一人称は向かないようです。



『不意打ち』




「なぁ、四木さん。昨日も狙われたんだろ?もうヤクザなんてやめろよ」

機会を伺って切り出した千景に、四木は片眉を上げた。
聞く耳を持たない様子の四木に、千景は畳み掛けて質問する。
「そのケガってそうなんだろ?あんた何も言わねぇけど、俺だってちゃんと分かってんだからな」
四木は煙を吐き出すと、近くにあった灰皿をたぐり寄せて煙草を押し潰した。
「あなたの方こそ、増えてるじゃないですか」
「え?」
千景は目を開いて問いかけると、四木が指差しする。
「ケガですよ。額に一つ」
「ああ、他校の連中とやり合っちまって・・・」
ガーゼの張られた額へと手をやる。
「って言うか俺のは擦り傷だろ。あんたのはざっくりやられちゃってるじゃねぇか。なぁ、それ膿んだりしてねぇ?」
千景が四木の損傷部に触ろうと手を伸ばすと、ぱしっと素っ気無く払われてしまう。
そうだった、客が少ない飲食店とは言えここは外だ。
周囲の目線がある時に、千景を近付けさせないのは昔からだ。
千景も前に比べて慣れたとは言え、それでもちょっぴり傷ついたように、ジュースを一口飲み込んだ。
「大体おかしな事を言いますね。暴走族もやめられない坊やが」
暴走族とヤクザでは次元が違う気もするが、確かに人の事は言えない。
千景は口を尖らせて、四木を睨むように見つめた。
「そんな事言って。俺が族やめたらあんたもやめるんだな?」

「おや、やめるんですか?似合ってたのに・・・特攻服」

不意打ちで紡がれた言葉に、千景は絶句してしまった。
四木が千景を褒める事なんて、そう滅多にない。
千景は押し黙った後、急に顔が熱くなってしまい、結局それ以上四木になんの反論もできなかった。


そしてそれから数日後の話だ。
千景が四木に会うなり、驚いた表情でこう言った。

「なぁなぁ四木さん!この間言ってた他校の奴が闇討ちにあったんだってよ!」
「・・・怖い世の中ですね」

そう言って四木はまた煙草を咥えた。
まさか裏でこっそり四木が締め上げたとは思いもしない千景は、日頃の行いだよなー、とのん気に笑っていた。




今までなんの行事ネタもやって来なかったのに、なぜか四木ろちだけは頻繁にやってしまいます。
任侠に正月はお似合いですしねv
バレンタイン四木ろちとか考えると今から楽しいです。



『新年早々』四木ろち




「四木さん」
そう呼びかけると同時に、白い息が広がった。
今年は例年より少し寒いらしい。
さすがの四木さんも、外に出るときは真っ黒な長いコートをはおっていた。
四木さんとは、クリスマスの数日後に会ったきりで、ちょうど一週間ぶりだ。
その間まったく連絡がなかったあたり、四木さんっぽいと不思議に納得した。
俺の姿に気づいた四木さんは、なぜかじろじろと見つめてくる。
「……六条さん」
「え?何だ?」
溜息交じりの呼びかけに、首を傾げる。
「今日は粟楠会の正月の挨拶に行くって言ったでしょう。そんな格好でどうするんです。まぁ分かってましたけどね」
四木さんは早々と歩き出してしまった。
慌ててその後ろを付いて行く。
「聞いてたけど、赤林サンとかだろ?普段着じゃ駄目なのか?」
「いつもだったらいいですけど、正月はちょっと。それに今回は特別なんですよ」
「特別?」
四木さんは軽く咳払いした。
「まぁ、あんまり気構えなくていいですよ。とりあえず服を揃えに行きましょう」
そう言って四木さんが向かった先は、老舗の百貨店の着物のお店だった。
仰々しい店構えに、思わず腰が引けてしまう。
こんなにちゃんとしなきゃなんないなんて、やっぱりヤクザって大変なんだな……と妙な所で感心してしまった。
四木さんが店員に何かを話しかけた後、俺の方に振り返る。
「ああ、そう言えば」
「ん?」
「着物は男物と女物、どちらを用意すればいいんですか?」
俺はおとなしく、動揺は微塵も表さないで、男物でお願いします、と言った。
なんつー事を聞いてんだあんたは!



紋付袴なんて、まさかこの年で着る事になるとは思わなかった。
普通は成人式で初めて着る、と言う人が多いだろう。
意外と重くて歩き辛い。
待たせておいたらしい車で目的の場所まで行き停車すると、外から誰かにドアを引かれた。
先に四木さんが降り、俺も続くと、ずらっと黒スーツの集団が出迎えていた。
いつもの粟楠会の事務所ではない、どこか違う場所だ。
緊張しながら黒スーツの間を通り抜けて、大きい玄関までたどり着くと、俺は四木さんの服を引っ張って耳打ちする
「なぁ、ここどこだよっ。もしかしてすげぇ大きい行事なんじゃねぇのか?」
「ここは粟楠会が持っている五月邸と呼ばれる施設ですよ。正月とか襲名式とか、そう言う大きなイベントがある時に使うんです。靴、脱いで下さい」
俺は言われた通り、草履を脱いで揃えておいた。
とんでもない所に連れて来られたのではないだろうかと思い、凄くどきどきして来た。
確かにこれじゃあ普段着では、あの車を降りる事すら適わなかっただろう。
「スリッパは履かないで下さい。裾は引き摺らないよう。私が先に入りますから、六条さんはその後に。畳になりますが正座は崩さずへりには座らないで下さい。敷居は絶対に踏んではいけません」
「え?そんないっぺんに覚えられねぇ……つか俺これから誰に会うんだよ?」
赤林さんとか青崎さんに、そんなに気を使う必要があるのだろうかと眉を寄せる。
四木さんは何も答えないまま、ある襖の前に来ると、廊下ですっと腰を降ろした。
何がなんだか分からずぼうっと立ってると、お前も座れと手で合図をされる。
「新年のご挨拶に参りました、四木です」
すると部屋の中から、「入れ」と言う声が聞こえた。
四木さんが、何度かにわけて襖を開けると、ようやくその声の正体が分かった。
粟楠会の会長、道元。
そしてその息子の、確か幹彌と言った名前のはずだ。
俺はどっと汗が出てきた。
写真と四木さんの話では聞いた事もあったが、実際に対面するとまとっている空気の重さが違う。
自分のチームでの抗争で、ケンカが強いヤツに会うことは良くあるが、そいつらがいかに薄っぺらいかを、たった今この場で思い知った。
「失礼します」
四木さんが頭を下げて和室に入る。
俺も見よう見まねで、同じ動作を繰り返し座布団に座った。
「会長、若。明けましておめでとうございます」
多分名前を呼ぶ順番も関係あるんだろうな、となんとなく思った。
「ああ、昨年のお前の活躍は聞いているよ。画を描いた通りカタにはめてるらしいじゃないか。今年は少し力を抜いて、のんびりとやってくれ」
「有り難うございます」
「それで?随分と若いのを連れて来たみたいだが」
幹彌さんがちらっと俺を見やった。
四木さんは俺の方に指先を向け、はっきりと言う。
「私のイロです」
さっきから聞いた事のない単語がよく出てくる。
ともかく紹介されたのだと思い、俺はぺこっと頭を下げた。
「……ろ、六条千景です」
自分の声が少し上擦っていた事にびっくりした。
俺が萎縮する事があるなんて。
そんな自分に負けまいと、俺は気合を入れ直して顔を上げた。
「道元さんと幹彌さんの事は、四木さんからよく聞いています。よろしくお願いします」
簡単に挨拶の言葉を言うと、もう一度深く頭を下げた。
これでよかったのだろうか。
正解なんて何も分からなかった。

その後部屋を退室し、玄関を通ってまた車に乗り込んだ。
運転手が静かに車を発車させると、四木さんが大きく息を吐き出す。
「大丈夫か?あんた随分緊張してたもんな」
四木さんの顔を覗き込むと、俺を見つめて来る。
「あなたって凄いですよね、本当」
感心してるのか馬鹿にしているのかよく分からない感じで言われてしまった。
「俺だって緊張したっつの。てか言ってくれよ!もっと前もってさ。まさかあんな大物出てくると思わないだろ」
「いや、なんせ私も自分の事で手一杯でして」
「あーもう絶対失礼なヤツって思われたよ!俺礼儀作法なんて知らないし」
四木さんは車の座席に座りなおし、煙草を口に銜えた。
火をつけ、煙を深く吸い込むと、ようやく落ち着いたようだった。
「いえ、そうでもないですよ。多分」
「そうかぁ?」
「ええ。昔誰だかが連れてきたイロが気に入らなくて、その場で袋叩きにしたと言う話もあるぐらいですから」
「そうなのかー……いや、それ俺がそうなった可能性もあったって事じゃね!?」
俺が突っかかると、四木さんは煙をくゆらせながら、不敵に笑った。

「なぁに、そうなったら私が守りますよ。命に代えてもね」

こんなセリフがさらっと出てくる所は、昔とだいぶ変わったのかもしれない……。





そして車は、今度は本当に粟楠会の事務所についた。
勝手知ったるよその家、と言った感じで、俺はほっと一安心する。
3階の四木さんが私室として使っている部屋まで来ると、内装が変わっている事に気づいた。
「あれ?パソコン?」
机の上に機械が並べてある。
「今時パソコンでも出来ないと、ヤクザもやってられないんですよ。嫌な世の中です」
「へー意外……。あ、額縁の絵も変わってんな」
俺が部屋の中を眺めていると、四木さんがすぐに戻ると言って出て行った。
一人残され、なんとなく部屋から窓の外を眺めてると、扉がノックされた音が聞こえる。

「四木の旦那ぁ。もう会長に新年の挨拶行きました?俺腰が重くってなかなか……」

部屋に入ってきたのは、赤林さんだった。
俺だと分かると、びっくりしてグラサンを外した。
「お嬢ちゃん!久しぶりだねぇ」
「久しぶり、赤林さん」
「いや、最近姿を見かけないし、四木の旦那もあんな感じだから……そうか、へへぇ。なるほどねぇ」
何かを色々察したようで、赤林さんは自分の顎を撫でながらふんふん頷いている。
「まぁ、多分あんたの思ってる通りだよ。これからまた出入りするけどよろしくな」
「そうかい。そりゃ賑やかになっておいちゃんも嬉しいが、そうだ。せっかく新年だし、みんなに挨拶していったらどうだい」
「四木さんが戻って来たらそうすっかな。さっき五月邸ってトコに行って来たばっかなんだよ」
赤林は顔を歪めて、のけぞった。
「ええっ?!ってことは会長と若にって事かい。道理でそんな紋付袴なんて着てると思ったら。そりゃあ……そうか、そいつは凄いな。お嬢ちゃんも四木の旦那も」
「どう言う事だ?」
「どう言う事って、会長に紹介するって事はだよ。俺は一生コイツと添い遂げますぜって事さ」
それを聞いて、俺は言葉を失った。
そんなに重い意味があるなんて、まったく分からなかった。
でもヤクザな世界からすると、自分の親に婚約者を紹介した、みたいな意味だったのかもしれない。
俺は一通り動揺した後、耳まで顔が熱くなった。
「いやーまさか四木の旦那がそこまでするなんて。相当なワザでも持ってんのかね嬢ちゃんは……」
赤林さんがしばらく何やらぶつぶつと呟いていたが、俺は四木さんの事で頭がいっぱいで、何も聞いていなかった。
四木さんがそんなふうに思っていてくれたなんて、心の底から嬉しかった。
「……聞いてる?嬢ちゃん」
「え?あ、悪い全然聞いてなかった。つーか嬢ちゃんってやめろよな」
「はいはい、千景ちゃん。だからおいちゃんにもちゅーしてくれよ」
「な?え?な、なんでそんな話になってんだよ!」
「四木の旦那のイロって事は、旦那と知己なおいちゃんの大事な人でもあるって事!ホントはおいちゃんに抱かれなきゃなんないのよ?」
「えええ、いや、無理無理!俺男はどっちかっつーと苦手だって!」
「だからちゅーぐらいで我慢してあげるって言ってんの。じゃないとうちの世界ではシメシつかねぇって追い出されちまうぜ?」
赤林さんの腕が俺の背中に回ってくる。
俺は肩を掴んで上体をそらした。
「で、でも……」
「せっかく四木の旦那が誠意見せてくれたんだし、千景ちゃんも頑張んないとね」
四木さんの顔が頭に思い浮かぶ。
眉を寄せて、赤林さんをじっと見つめた。
四木さんがそんなに俺の事を思ってくれたなら、俺も期待に応えたい。
俺は仕方なく意を決すると、ぎゅっと目をつぶって顎を上げた。
背伸びをして、赤林さんの肩口の服を掴むと、唇に柔らかい感覚が当たった。
それですぐに退こうとしたら、背中に回された腕にぐっと力が込められて逃げられなくなってしまう。
顎を掴まれて口を開かされると、舌が侵入して来る。
「!ッ……っ、~~……っ!」
服を強く引っ張ると、しばらくたった後ようやく赤林さんが体を離した。
「な、な、……何すんだよ……っ!」
「ちゅーって言ったらこんぐらい普通でしょ。やっぱ若いねぇ」
俺は唇に手の甲を当てて反論しようとすると、部屋に四木さんが戻って来た。
「四木さん……!」
助かった!っと言う気持ちで安心する。
「おや、赤林さん。来てましたか」
「お邪魔してましたよ。久々にお嬢ちゃんと会えましたしね」
四木さんはどかっとソファに座ると、足を組んで嫌そうに眉を寄せる。
「まったく、六条さんに余計な事をしたりしないで下さいよ。会長に紹介した今、六条さんに手出しされたら殺されるのは私なんですからね」
そのセリフを、頭の中で繰り返す。
今の赤林さんのって、手出しをされた内には入らないのか?
それとも赤林さんと四木さんは知己だから、例外なのか?
色々考えてると、赤林さんが部屋を出て行こうと歩き出す。
「分かってますって。四木の旦那。それじゃあね、千景ちゃん」
手を上げられたので、俺も咄嗟に手を振り返した。
そして赤林さんは、付け足したように言った。

「さっきの事はおいちゃんと二人の秘密だよ」

完全にはめられた。
俺はその場に固まって、頭が真っ白になってしまった。
赤林さんが去った後、当然ながら四木さんは、俺に問いかけてくる。
「なんですか、秘密って」
「いや……別に大した事じゃねぇんだけど……はは」

俺はそう言って、ただただ苦笑いを浮かべる事しかできなかった。

くろ太さんが四木六の絵を描いてくれました!
二人とも四木六のテンション高いので、六条WEBアンソロも四木六で行きます><
ここまでマイナーだともはやマイナーだとすら思わない。でも好き!
この絵に合わせた小説も書いてみました~^O^
ファーストクリスマス』の続編です。
年内更新はこれが最後です。
ご覧頂いている皆様、今年は有り難うございました!
来年も六条で盛り上がりましょう~^^





『アフタークリスマス』


インターホンを押すと、鍵の開く音が聞こえる。
ドアが開き四木さんの顔が見えると、なんだか少しだけ緊張した。
あのクリスマスの日から、二日がたって、今日は27日だ。
嘘みたいな偶然から、俺と四木さんは再び関係を戻す事になった。
改めて四木さんの姿を見ると、あれは嘘なんかじゃなかった事が実感できる。
「迷いましたか」
そう言って四木さんは俺を部屋へ招き入れた。
「やっぱ都会ってワケ分かんねーな。人も信号も多くてごちゃごちゃし過ぎ」
「愛車はどうしたんです」
「地元の駅に置いて来た。こんな所で乗ってたら人ひいちまうよ」
四木さんは少しだけ笑いながら、俺の着ていた上着を脱がしてハンガーにかけ、帽子を取ると唇を合わせる。
「そろそろ、厚手のコートでも着たらどうです。寒いでしょう」
以前と違うのは、あたりがやわらかくなったかな、と思える事だ。
前だって優しいとは思っていたけど、うっかりすれば見落としてしまうぐらいの優しさだった。
「そんな寒がりじゃねぇんだけど、でも今年は新調す……」
返事を最後まで待たずに、四木さんは革張りのソファに俺を押し倒して来る。
「わっ……っと、四木さん?」
「コートが欲しいなら、買ってあげますよ」
俺の手を取り、視線を合わせて来る。
「あ、いや別に」
「それともアクセサリーがいいですか?私と揃いの指輪でも」
正直に言うと、それはちょっと欲しいと思った。
でも四木さんの指先に目線をやると、いかにもやくざな商売ですって感じの指輪で、俺は思わず首を横に振る。
そんな会話をしてる間にも、四木さんは俺のシャツのボタンを上から順に一つずつ外して行く。
意外とがっつくんだよな、と口に出したら怒られそうな事を思った。
四木さんは俺のシャツの前を肌蹴させ、ベルトを緩めてファスナーを下げる。
細くて角張った指が、肌を這った。
この指が、どれだけ器用に動くかを知っている。
俺は唾を飲み下した。

四木さんは行為中、いつも静かで、さめた目をしている気がしてた。
俺が上に乗ってなかなか動けないで居た時も、煙草を吸い始めた事なんかもあった。
だから俺だけ興奮してるなんて恥ずかしくて、いつも声を出さないように必死に押し殺してた。
もし誰かが俺らの行為を見る事があったら、そんなに静かにしなくても、と思うほどだっただろう。

「痛くないですか?」
そう言えば、二日前のクリスマスの日にも、そう聞いてきた気がする。
俺はいつものクセで、一度頷いたっきり、声を我慢するのに必死だった。
今度は薄目を開けて、ぽつりと呟くように言ってみる。
「・・・痛くない」
そう言うと、四木さんはどこか安心したような表情を浮かべた。
そして俺の体に手を回すと、ゆっくりと腰を動かし始める。
中が擦れる感覚が伝わってきて、つい口が開く。
いつもならもっと耐えられたはずなのに、細い視界から僅かに見える四木さんが、俺を見つめている事に気がついてしまった。

「んぅ……っぅ、ぁ、あ……っ」

自分でも信じられないくらい甘い声が出て、咄嗟に手のひらで口を押さえる。
羞恥で耳まで熱くなり、顔を思い切りそらした。
四木さんの顔を見るのが怖かった。
どうせ冷めた目で、やれやれと溜息をつかれるのだ。
ふと、耳元に四木さんの唇が触れて来る。
「ここ……、好きですか?」
そんな事を聞かれたのは初めてだった。
四木さんの声が艶っぽくて、心臓の音が早くなって行く。
「……っ」
俺は口を手で押さえたまま、無言でこくこくと頷いた。
何故かは分からないけど、涙が溢れそうだった。
すると四木さんは、俺がいいと言った箇所に、何度かぐりぐりと刺激を与えて来る。
「ぅっ……く、……ッ」
眉間に皺を寄せ歯をぎりっと噛み締めると、四木さんが俺の顔から手を離させた。
「……もしかして、声、我慢してるんですか?」
もしかしても何も、見て分かるだろう、と言ってやりたい。
文句の代わりに、俺は小さく頷く。
「……辛いんだと思ってました」
「今まで?」
驚いて思わず俺はそう言葉にした。
今度は気まずそうに四木さんが頷く。
「今までずっと、六条さんは痛くて辛いから、そんな苦しそうな表情をしているのかと」
「そ……そんなワケねぇだろ……っ四木さんが冷めた顔ぇして黙ってっから、俺だけみたいで恥ずかしいんだよ……っ」
四木さんにとっては意外な事実だったのか、目を丸くしている。
そして再度俺に覆い被さると、唇を重ねて来た。
噛み締めていた歯を割って舌が侵入して来る。
口が半開きのまま、四木さんは腰を動かし始めた。
「ふ、ぁっ……ぁ……待っ……あ……っ」
四木さんの舌が邪魔して、唇が閉じれない。
荒い息と一緒にくぐもった声が漏れてしまう。
「やぁ……っあ、四木さん……っ」
名前を呼びかけると、四木さんの動きがぴたりと止まった。
うるさかっただろうかと、四木さんを上目で見やる。
そこには、初めて見た表情の四木さんが居た。
額が薄っすらと汗ばんで、呼吸を乱している。
熱っぽい目線で、俺の事をじっと見つめていた。

「六条さん……、……千景」

そんなのだけでもう、俺は達してしまいそうだった。
なのに四木さんが激しく揺さぶってくるから、声なんか我慢できるはずなかった。
「ん――っ……っぁ、あ……っ!四木さん……っ四木さん……!」
自分の高い声に、くらくらと眩暈がする。
俺が精を吐き出すのと同時に、四木さんの熱が最奥へ注がれたのが分かった。
なんだか頭がぼうっとする。
普段だってこんな大きな声、滅多に出す機会なんてないからかもしれない。
四木さんは俺の髪を掻き上げ、軽くキスをした。
ずるりと引き抜かれ腰を震わすと、急にひょいっと抱きかかえられた。
四木さんは数歩歩いて、ソファからベットに俺を移動させる。
何がしたいのだろうと思っていると、俺の肩に引っかかっていたシャツを剥がし、足元で止まっていたズボンも全て脱がせて、膝の裏を掴んで持ち上げた。
「な、何すんだよ……っ」
体勢が崩れてベッドに肘を付くと、四木さんが被さって来た。

「聞きたいんですよ、六条さんの声が。今度は我慢しないで下さいね」

皮肉な笑みで、俺の心を貫いて、駄目だなんて言える訳がないだろう!





ベッドでの情事を終えて、四木さんは縁に座って煙草をふかしていた。
変わらない煙草の匂い。
俺も隣に座って四木さんの肩に頭を乗せると、腰に手が回ってきた。
思わずぶるりと身じろぎする。
過剰に反応してしまう体に、いい加減疲れてぐったりした。
「あー……、体のうずきが取れねぇ。俺をこんなにしてどうすんの?風俗にでも埋めるつもり?」
四木さんは喉で笑った。
「そんな体にケガばかりの子供なんて売れませんよ」
「それもそうだな……」
妙に納得して、瞳を閉じた。このまま寝てしまいそうだ。
「疲れたし腹減ったなー。なんか食べたい」
特に何を期待する訳でもなく言ったのだが、予想外の答えが返って来る。
「ああ、冷蔵庫にケーキがありますよ。一応クリスマスって事で」
「え?マジ?」
勝手に開けていいと言われたので、俺は重い腰を持ち上げて、冷蔵庫に向かった。
庫内には、確かにケーキの箱と思われるものが入っている。
取り出してみると、見た事のあるロゴマークがシールに付いていた。
「うっわー、これ前ハニー達が言ってたヤツじゃん。確か凄ぇ並ぶとかって……」
まさか四木さんが並んでケーキを買って……と思ったが、さすがにそれをするはずがない。
きっと部下の誰かに買いに行かせたのだろう。
ケーキと、言われた通りシャンパンボトルも持って、四木さんの所へ戻った。
「有り難うな、これって有名店のヤツだろ?」
「そうなんですか」
あ、やっぱり買いに行かせたのか、と思って逆に安心した。
四木さんがボトルを手に持ち、栓抜きをしようと力を入れて引っ張り始める。
「俺やるぜ?」
「出来るんですか」
「いや、別に得意とかじゃねぇけど・・・、っと、開いた」
俺は難なく力にものを言わせて栓を抜くと、ボトルを四木さんに渡した。
シャンパングラスに色づいた液体を注ぎながら、四木さんが呟く。
「……たまに思い出すんですけど。六条さんって腕っ節が強いんですよね」
「俺?そりゃそうだろ。少なくとも四木さんよりは強いぜ」
「力で勝負する気はないですよ」
俺はケーキを1カットだけ皿に乗せると、四木さんが座っていたソファに腰を下ろそうとした。
すると四木さんの腕が伸びてきて、俺の腰を抱える。
膝の間に座る格好となって、なんだか気恥ずかしくて下を向きながら、ケーキを一口食べた。
「……ん、やっぱ美味い。四木さんも食うか?」
実はこう見えて、四木さんは甘いものが好きだ。
フォークに一口とって、四木さんの口に運ぶ。
「1カット取る?」
「いえ、そんなにいらないです。六条さんも」
「ん?」
四木さんはシャンパンを一口分だけ口に含み、俺の顎を掴んで口移しさせた。
こくりと飲み下すと、アルコールの匂いが漂ってくる。
シャンパンにしては強い酒なのか、くらっとして四木さんの方へ体を傾けた。
「四木さん、俺未成年」
「なぁに、少しぐらい」
「帰りバイクだって」
「車で送らせます。ここに泊まって行ってもいいですし」
"子供は早く帰るべきです、人目につくので先に出て行きなさい"
同時に昔言われたセリフも思い出した。
すべてが、俺の事が心配だったから、と言う訳ではないだろう。
短い期間に、四木さんも変わったのかもしれない。
俺は一つ息を吐き出すと、煙草を咥えようとしている四木さんの顔を見つめた。
「あんたにこんなに優しくされるなんて、なんか変な気分だ」
「ああ、それなら安心して下さい」
四木さんは声色を切り替え、はっきり言った。

「昔六条さんにしてきた事の、罪滅ぼしの日みたいなものですから。30過ぎて性格なんて、そう簡単に変わりませんよ」

あんたは俺に対してひどくしていたあの長い期間を、たった一日でなかった事にしようとしているのか。
やっぱり四木さんは四木さんだった事に、俺は驚いた後がっくりと肩を落とした。



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突然降り出した雨だった。
ハニー達を家まで送り届けて、バイクを停めてある場所まで急いで走った。
(クリスマスだっつのに・・・降るならせめて雪にしてくれよ)
俺は心の中だけで文句を言いながら、バスロータリーを抜けようとした時。
目前に見えた人物に、思わず足が止まった。
見間違えるはずもなかった。
そのまま駆け抜けてしまえば良かったのに。
足が動かない。
向こうも俺を見据えたまま、立ち尽くしている。
どうして。
前にあんたが車に乗ってる姿、見かけた事あるよ。
俺と目が合ったのも知ってて、無視して車を出したよな。
隣にはあの赤林って男が乗ってたはずだ。
なのにどうして今、あんたは俺の事を見てるんだよ。

「四木さん・・・」

名前が口からこぼれると、四木さんは近くに寄ってきた。
自分が差していた傘を、俺の方にも半分傾けてくれる。
「・・・傘、持ってないんですか」
「え?・・・ああ。降ると、思ってなくて」
会話をしたのは、3ヶ月ぶり位だった。
その間、見かけたのもたった一度だけ。
最後の四木さんのセリフは、「子供なんかに構ってるヒマはない」だったか。
「お前が必要なくなった」だったか、もう忘れてしまった。
まさかもう一度四木さんに会うなんて思ってもなかった。
流れてる沈黙の時間が気まずくて、俺から口を開いてみる。
「元気そうだな・・・でも、少し痩せた?」
四木さんは少し押し黙ってから、小さく頷いた。
「ええ、まぁ」
久しぶりに会えたのにその短い返事に、居た堪れなくなる。
俺は無性にその場から逃げたくなった。
「・・・じゃあ俺、行くな」
これ以上いると、何か余計な事を言ってしまいそうで、俺は走り出そうとする。
しかし、腕を掴まれ引き止められた。
不審に思って振り返ると、四木さんの眉間に、いつもより皺が一本多く刻まれていた。
「濡れますよ、六条さん」
「バイク・・・向こうにあるし」
「来なさい」
そう言われて、引きずられるように手を掴まれる。
でも、とか、あの、なんて単純な言葉でさえ、何も出てこなかった。
連れられるがままに、四木さんの後を付いて行く。

しばらく歩くと、大きいマンションの前にたどり着いた。
セキュリティの掛かった玄関を抜けて、一室の扉の前までくると、怪訝な表情で尋ねる。
「ここ、どこなんだ?」
「私の部屋ですよ」
俺は本当にびっくりした。
だって付き合ってる時ですら、四木さんの部屋に上がった事なんてなかった。
いつも会うのは粟楠会の事務所か、立派なホテルの部屋かどちらかだったから。
何度か「四木さんの部屋に行ってみたい」とは言ったけど、他人に上がり込まれるのは嫌だと突っぱねられたのだ。
四木さんはカードを通して鍵を開けると、部屋に俺を入れた。
「お風呂、そこですから」
「え?てか四木さん、俺・・・」
まさかそこまでしてくれるとは思って居なかったので慌てていると、四木さんが背中を押して脱衣室に促した。
勝手にドアを閉められてしまったので、俺は仕方なく服を脱いで軽くシャワーを浴びた。
熱い湯が、体の芯から暖めてくれる。
脱衣所で体を拭いていると、不意に四木さんがドアを開けた。
「っと、失礼」
俺が上がっているとは思わなかったようで、目線をそむけながら着替えを渡してくる。
「大きいかもしれませんが」
「あ・・・ありがと、でも」
俺の言葉を遮って、四木さんはまた奥の部屋のほうへ行ってしまう。
渡された長袖のTシャツに着替えながら、なんだか夢を見ているような気分になる。
あの四木さんは、本当に俺の知ってる四木さんなんだろうか。
いつも斜に構えて、煙いと言っても煙草は吸い続け、二人で会う時も近寄るなと言わんばかりに払いのける、あの四木さんだと言うのか。
そう言えば振られた時に、「必要なくなった」と言ってた事を思い出す。
もしかしたらまた、俺の何かを利用したいと思ってるのだろうか。
俺は下服も着替え終わると、脱衣所から出てリビングと思しき場所へ足を運んだ。
四木さんは黒い皮のソファで、ジャケットを脱いで腰を下ろしていた。
俺の姿に気付くと、吸っていた煙草を灰皿に押し潰し立ち上がる。
「なぁ」
自分から呼びかけてはみたが、顔が上げられなかった。
「なんかまた・・・情報が必要になったのか?」
「?・・・何の話です」
「ほら、別れる時にあんた言ったじゃん。埼玉の方から東京に幅を利かせてるチームがあるから、探りを入れてたんだって。俺もその一部に過ぎないって、言ってただろ」
ちらっと伺うように上目で四木さんを見る。
四木さんは目を開いて少し驚いていた。
「なんだよ」
「いや、まさか本当にあんな適当な嘘を信じるとは思ってませんで。まあそれが六条さんらしいですけど」
「嘘?嘘ってなんだよ。あんたそう言っただろ」
つい、口調がきつくなってしまう。
なんせ俺は四木さんに一方的に別れを告げられ、突き放されたのだ。
その後しばらくは、なかなか眠れなかったし何度も電話をかけてしまった。
すでに携帯番号は変えられてしまっていたけど。
四木さんはしばらく俺を目線を合わせると、唐突に腕を伸ばして抱きしめて来る。
「四木さん」
「あの時期、粟楠会は大きな派閥争いに巻き込まれていました。私の事を執拗に狙ってくる連中も居ました。覚えていますか?あなたが新宿3丁目の界隈で、突然車中に引き込まれそうになった事を」
言われて俺は、そう言えばそんな事もあったと思い出した。
車の中から手を強く引かれただけだったので、蹴りを入れて怯んだ隙に逃げたから大事にはならなかったし、俺も危険な目に合ったとは思って居なかった。
「あれは敵対組織の連中が、あなたを私の仲間だと思って及んだ犯行でした。だから、私は・・・」
四木さんの言葉が途中で切れた。
次の言葉を待つ間に、俺はまさかと思って瞳を開く。
「まさか、あんた・・・俺が巻き込まれるのが、嫌だった・・・?もしかして、二人で外に居る時離れてろって言ってたのも?」
四木さんは険しい表情のまま、一度僅かに頷いた。
今思い出すと、そう言えば会う場所はいつも人の少ない所だった。
ホテルとか密室の空間だと、べたべたしても怒らなかった。
人目のある所でくっ付くなんてみっともないって言葉、俺そのまま鵜呑みにしてたよ。
四木さんの俺を抱きしめている腕に、力がこもる。
「どうしてあの時、危険があっても私が守ると、そう言えなかったのか・・・後悔しました」
四木さんの細くて角張った指が、髪に差し込んでくる。
「今日偶然姿を見つけてしまって、動けなかった。巻き込みたくないのに、家にまで連れて来てしまった。ただのその場の衝動で」
衝動。
何事も考えてから行動に移す四木さんが、衝動で動いたのだ。
俺は腕を上げて四木さんの背中に手を回した。
「なんで・・・っ。なんで、ちゃんと言ってくんなかったんだよ。俺、あんたに元々好かれてなかったんだと思って・・・っ」
「すいませんでした。六条さんはまだ学生だし、私とは住む世界があまりにも違うから」
「分かってるよそんなの・・・!四木さんの世界なんて俺には程遠いけど・・・でも、あんたが好きなんだよ!あんたは俺を守りてぇとか言うかもしんないけど、俺だって四木さんの事守りたいんだよ・・・っ」
四木さんは涙ぐむ俺の顔を上に向かせると、唇に覆い被さってくる。
角度を変えて優しく啄ばみ、一度顔を離すと、今度は貪るような口付けをした。
四木さんの手が肌に伸びてくる。
不思議だ。
前はすごく冷たい指先だと思っていたのに、今は熱さを感じるほど暖かい。

「四木さん」と呼びかけてしがみ付くと、「千景」と言って笑ってくれた。





雨が、降り続いている。
俺は裸にシーツだけ肩から引っ掛けて、大きな窓枠から夜景を眺めていた。
後ろの方で、四木さんがシャワーを浴びてる音が聞こえる。
途方もないくらい遠くまで見渡せる夜景でも、クリスマスのせいか、光に緑や赤色が多く見えた。
いつの間にか四木さんが風呂から上がったようで、背後に立っていた。
俺の肩に手を付き、同じように窓の外を覗き込む。
「あぁ・・・クリスマスでしたか」
「そうだよ。四木さんはそう言うの、嫌いそうだもんな」
四木さんは肩を抱き寄せると、俺と軽く唇を合わせた。
「いいですよ、六条さんがしたいなら。クリスマスディナーでも食べに行きますか」
俺はびっくりして腰が引けてしまった。
「え?何どうしたの四木さん。会わない間に天地がひっくり返るような事でもあったの?」
四木さんはくすっと笑った。
「別にもう格好つける必要もないですからね」
「・・・格好つけてたんだ」
意外な事実に驚く事ばかりだ。
「さぁ、どうでしょうね。少なくとも、過度に人目を気にしたりとかは、もういいかなと」
「だからクリスマスディナー?嬉しいけどさ、でも四木さん。そう言うのより」
「はい?」
「千景って、さっき呼んでくれたよな。知ってたか?名前で呼ばれたのってこれが初めてなんだぜ」
「そうでしたっけ」
分かっている素振りで、四木さんは煙草を取り出して口にくわえた。
「そうだよ。だから、なぁ、これからは名前で呼んでくれよ。六条さんなんて、他人行儀過ぎねぇ?」
「まぁ、それは行く行くですね」
「なんだよ、人目は気にしないんじゃなかったのかよ」
「私自身の問題ですよ。さすがにちょっと・・・照れくさいと言うか」
そう言った四木さんの表情は、誤魔化している訳でもなく、本当に恥ずかしそうにしていた。
だから思わず俺は笑ってしまった。

「じゃあまあ、行く行くだな」
「ええ」

気付けば時計は深夜の12時をまたぎ、日付が変わっていた。
外の気温は更に冷たさを増し、雨から雪へと変わって行く景色を、四木さんと二人で眺めていた。




描いてしまった。
本当に誰得なんだろう^^
でも四木六かなり萌えると思うんですよね><
絶対四木さんは外ではそっけなくて腕とか組まないんですよ!
なんならちょっと距離とって歩いたり、
年齢も違うから趣味も話も合わなくて、六条が一方的に喋ってるだけ。
でも六条の話を聞いてるのは四木さんは嫌いじゃなくて、
煙草をすいつつ適当にあいづちをしている時に幸せを感じたりする。
六条にケガさせた連中には、影で動いて制裁をくらわせるよ!
そんな四木六が大好きです。
EROも妄想し始めるととまらない・・・!



skrc.jpg



四木さんと赤林さんを初めて描きました・・・難しかった。
今回はちゃんと携帯版も画像を作ってあります↓

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